2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

サムライと愚か者〜暗闘オリンパス事件〜、山口義正、講談社、p.226、\1470

オリンパスの粉飾決算(損失隠し)を暴いた日経新聞証券部記者出身の経済ジャーナリストが、月刊誌「ファクタ」でのスクープまでの経緯、スクープ後の動きを詳細に語った書。スクープをものしたジャーナリストの緊張感が伝わり、読み応え十分である。日本の…

帝国ホテルの流儀、犬丸一郎、集英社新書、p.176、\735

キアヌ・リーブスは映画「JM」でアドリブで語ったという。「シャツを洗濯に出したい。できれば帝国ホテルのランドリーに」と。ここまで持ち上げられた帝国ホテルのサービスの原点を、父親と二代にわたって帝国ホテルの社長を務めた著者が洒脱な筆致で披露し…

こうして世界は誤解する〜ジャーナリズムの現場で私が考えたこと〜、ヨリス・ライエンダイク、田口俊樹・高山真由美・訳、英治出版、p.288、¥2310

1998年から2003年に中東特派員として活躍したオランダ人ジャーナリストによる報道現場の実態報告。西欧における中東報道が、どのように作られているかを詳細にレポートする。最も影響力のある国際ジャーナリスト40人」にも選ばれた筆者が、報道現場の裏側を…

文化と外交〜パブリック・ディプロマシーの時代〜、渡辺靖、中公新書、p.204、¥819

政府要人同士による外交ではなく、相手国の世論に直接働きかけて所望の結果を得る「パブリック・ディプロマシー」の歴史や事例、課題を紹介した書。欧米や中国、韓国に比べ、日本のパブリック・ディプロマシーは出遅れており、戦略がないと警鐘を鳴らす。冒…

中国化する日本〜日中「文明の衝突」一千年史〜、與那覇潤、文藝春秋、p.320、\1575

日本の歴史を中国化と江戸時代化という観点から再定義した書。「中国化する日本」というタイトルだけではなく、中身もかなり強烈である。本書で語られる歴史観は、教科書と大きく異なる。教科書の誤った記述で日本人の歴史観は偏ってしまったと筆者は筆鋒鋭…

勾留百二十日〜特捜部長はなぜ逮捕されたか〜、大坪弘道、文藝春秋、p.308、¥1470

大阪地検特捜部の捜査資料改ざん・隠蔽事件で、犯人隠避罪に問われて逮捕・勾留された元特捜部長・大坪弘道の手記。120日に及ぶ独房生活中に去来したものを正直に綴っている。拘禁される辛さや厳しさについての記述は体験者ならではの内容である。著者の人生…

知性誕生〜石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源〜、ジョン・ダンカン著、田淵健太・訳、早川書房、p.332、¥2310

人間の知性がどのようにして生まれているのか、脳の働きとどのように関係しているのかを、ケンブリッジ大学の脳科学者が解説した書。人間の行動や思考、知能の基本原理を、最新の実験心理学、脳科学、神経生物学、さらには人工知能研究からの知見に基づき論…

さいごの色街 飛田、井上理津子、筑摩書房、p.302、¥2100

売春防止法が施行されてから50年以上たった今も、昔の色街の風情を残す数少ない場所が大阪の飛田である。表立っての活動ができないだけに、部外者や取材を拒否する土地柄といえる。実際、写真の撮影も基本的に御法度という。本書は、その飛田に食い込み12年…

7つの危険な兆候〜企業はこうして壊れていく〜、ポール・キャロル、チュンカ・ムイ、谷川漣・訳、海と月社、p.308、\1890

過去25年における750件の失敗事例を検証し、企業はどのように失敗するか、どうすれば破綻を回避できるかを論じた書。失敗を引き起こすのはタイミングや運、事業遂行のプロセスではなく、戦略のまずさによるというのが筆者の結論である。豊富な事例を使った説…