2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

Think Simple〜アップルを生みだす熱狂的哲学〜、ケン・シーガル、高橋則明・、NHK出版、p.320、¥1680

評者の本棚でジョブズ本を含むアップル本がどんどん増殖している。いまやIBM本やマイクロソフト本と肩を並べる。ジョブズ死後もアップルの勢いは止まっていないので、間もなく抜き去るのは確実だ。本書はそうしたアップル本のなかでもベスト3に入る。“Simple…

別海から来た女〜木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判〜、佐野眞一、講談社、p.290、¥1575

3件の殺人を行ったとして、2012年4月に死刑判決をうけた木嶋佳苗を追ったノンフィクション。佐野眞一の事件モノといえば「東電OL」だが、この事件も勝る劣らず特異だ。佐野はいつものように周辺を徹底的に洗いながら、目撃証言も自供もない事件の背景を奥行…

グーグル化の見えざる代償〜ウェブ・書籍・知識・記憶の変容〜、インプレス選書、シヴァ・ヴァイディアナサン、久保儀明・訳、p.320、\2100

情報や地図、画像、書籍の検索など、グーグルのサービスの利便性に慣れ親しんだ結果、我々が「失った」あるいは「失おうとしている」ものを多角的に論じた書。ヒステリックに警鐘を鳴らすのではなく、グーグル化が進行する世界について、是は是、非は非とし…

100のモノが語る世界の歴史 1 文明の誕生、ニール・マクレガー、東郷えりか・訳、筑摩選書、p.285、\1995

大英博物館が250年にわたって収集したモノから100点を厳選し、それらに世界史を語らせるという企画。歴史好きには堪らない内容である。数点の写真と10ページほどの文章の組み合わせも絶妙で、テンポよく読み進むことができる。歴史好きでなくても十分楽しめ…

刑務所の経済学、中島隆信、PHP研究所、p.256、\1470

タイトルにつられて購入した書。中身は経済学の範囲を超え、けっこう面白い。買って正解だった。筆者は犯罪者が罪を償うためにかかる経費と社会的損得を天秤にかけて論じる。老人ホームか障害者施設かと見まがう刑務所の実態を明らかにするなど、読みどころ…

スタートアップ!〜シリコンバレー流 成功する自己実現の秘訣〜、リード・ホフマン、ベン・カスノーカ、有賀裕子・訳、日経BP社、p.304、¥1680

読むと元気が出る書。「心配の多くは杞憂に終わる。案ずるより産むが易し。まず行動を起こせ」が全体を通してのメッセージである。セレンディビティ(偶然の幸運)は、動き回っているときにやってくるからだ。筆者はビジネスパーソン向けSNS「LinkedIn」の共…

真実〜新聞が警察に跪いた日〜、高田昌幸、柏書房、p.285、\1955

北海道新聞と北海道警察が争った名誉毀損裁判における裏交渉の実態を明らかにしたノンフィクション。筆者は北海道新聞の元報道本部次長。裁判の一因となった「裏金報道」や「泳がせ捜査失敗報道」を手がけた元記者である。取材や裁判資料などをもとに警察と…

高橋是清と井上準之助〜インフレか、デフレか〜、鈴木隆、文春新書、p.255、\872

現在の日本経済と経済政策を、昭和初期と比べながら描いたノンフィクション。主人公は、日銀総裁と大蔵大臣を歴任した高橋是清と井上準之助。2人はもともとは上司と部下の関係にあり、昭和初期に活躍した大物政治家・エコノミストである。インフレ財政(国…

フェア・ゲーム、ヴァレリー・プレイム・ウィルソン、高山祥子・訳、ブックマン社、p.287、\1800

筆者のヴァレリー・プレイム・ウィルソンはCIAの元諜報員。夫は元駐ガボン大使である。いずれも体制側の人間だが、夫のイラクの大量破壊兵器製造を否定する寄稿をキッカケに、夫婦はブッシュ政権から目の敵にされる。妻はCIA諜報員であることをリークされ、…

続・日本の歴史をよみなおす、網野善彦、ちくまプリマーブックス、p.204、¥1260

従来の日本史観を覆す網野史観を展開する歴史学者・網野善彦。前作「日本の歴史をよみなおす」が実に興味深い内容だったので続編も購入。本書も期待を裏切らない好著である。常識として考えてきたことが、事実と異なっているという指摘は新鮮である。 続編で…