2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

海賊とよばれた男(上)、百田尚樹、講談社、p.386、?1680

出光興産の創業者・出光佐三をモデルにした小説(帯にはノンフィクション・ノベルとある)。主人公の名前は出光佐三ならぬ国岡鐵造。官僚組織との対決などヤマト運輸の小倉昌男を彷彿とさせ痛快である。もっとも、ノンフィクション好きな評者としては実名で…

ケータイ化する日本語〜モバイル時代の“感じる"“伝える"“考える"〜、佐藤健二、大修館書店、p.293、?2415

タイトルからは、携帯電話の普及が日本語にどのような影響を与えたを解き明かした書のように思えるが、そう考えて買うと落胆するかもしれない。そもそも携帯電話についての言及は多くない。著者は、電話というメディアについて、歴史的や生物学的、社会的、…

一揆の原理〜日本中世の一揆から現代のSNSまで〜、呉座勇一、洋泉社、p.237、\1680

「一揆とは何だったのか」について論じた歴史書。一揆に関して持っている常識が、いかに間違っているかを思い知らされる。もっとも、副題に「日本中世の一揆から現代の SNS まで」、帯に「一揆の思想と行動原理は、現代のソーシャル・ネットワークに通じてい…

ヒトはなぜ眠るのか、井上昌次郎、講談社学術文庫、p.208、\798

睡眠学の入門書。睡眠について網羅的に紹介しており、実によくまとまっている。もともとは1994年に出版された本だが古さを感じさせないところは、睡眠学の第一人者の手によるところが大きい。筆者は講談社学術文庫版の前書きで、「本書は睡眠学の黎明期に執…

日本はなぜ開戦に踏み切ったか〜「両論併記」と「非決定」〜、森山優、新潮選書、p.223、\1260

日本社会の意思決定プロセスの致命的な欠点を鋭く突いた書。面白い。本書が取り上げるのは、第2次世界大戦の開戦プロセス。政府、陸軍、海軍、参謀本部、外務省の首脳はそれぞれに都合のよい案を併記し決定を先送りした。日本お得意の玉虫色の文章だ。矛盾…

山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた、山中伸弥、緑慎也、講談社、p.194、\1260

帯には「祝・ノーベル賞受賞! 唯一の自伝」とある。自伝とは少々オーバーな気もするが、2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞した山中教授自身が断片的にこれまでの人生を語っているのは事実。本書はジャーナリストの緑慎也が山中教授へのインタビューをも…

毒になるテクノロジー〜iDisorder〜、ラリー・D・ローゼン、ナンシー・チーバー、マーク・キャリアー、児島修・訳、東洋経済新報社、p.321、\1520

評者は先日バリを旅行したが、町中のカフェやレストランは必ずと言って「Free Wi-Fi」の看板がかかっている。注文もそこそこに、まず店員にパスワードを聞きスマートフォンやタブレット PC でネットにアクセスする。Wi-Fi の調子悪いとすぐに店員にチェック…

ネットと愛国〜在特会の「闇」を追いかけて〜、安田浩一、講談社、p.370、\1785

在特会(在日特権を許さない市民の会)の活動を追ったルポルタージュ。寡聞にして知らなかったが、在特会は1万人を超える会員を抱える日本最大の保守系市民団体である。「在日コリアンをはじめとする外国人が」「日本で不当な権利を得ている」と主張して勢力…

ネゴシエイター〜人質救出への心理戦〜、ベン・ロペス、土屋晃・訳、近藤隆文・訳、柏書房、p.380、\2310

ネゴシエーターと言われて思い出すのは、サミュエル・L・ジャクソンとケヴィン・スペイシーの映画「交渉人」。無実の罪を着せられた警察ビルに立てこもったサミュエル・ジャクソンと交渉人ケヴィン・スペイシーを中心とした映画は、最後のどんでん返しを含め…

化石の分子生物学〜生命進化の謎を解く〜、更科功、講談社現代新書、p.240、\798

化石のDNAやタンパク質、今生きている生物のDNAを分析・解析して人類の進化史を探る「古代DNA研究」を紹介した書。研究成果だけではなく、解析法や解析ツールなども丁寧に解説している。「ネアンデルタール人は現生人類と交配したか(我々にネアンデルタール…