太陽 大異変〜スーパーフレアが地球を襲う日〜、柴田一成、朝日新書、p.211、\798


 京都大学天文台長で太陽物理学者の筆者が、最新の研究成果をもとに太陽の素顔に迫った書。大爆発(スーパーフレア)や黒点が生じる仕組み、地球に与える影響について論じる。新書らしい内容で、ちょっとした知識を身につけるのに役立つ。太陽の物理に関する記述は少し難解だが、そんなもんかと読み飛ばせばよいだろう。夏休みなどの生き抜きに向く書である。
 筆者は冒頭で、1000年に一度の超巨大爆発「スーパーフレア」が起こったときに、地球にどんな影響を与えるかをSF仕立てで紹介する。これが、なかなか衝撃的である。大量の放射線粒子が地球に降り注ぎ、人工衛星はすべて故障し、航空機の乗客のなかには急性放射線障害を起こす人が現れ、北極圏ではオゾン層の破壊が始まり、GPSは動かなくなる。さらに大磁気嵐によって大停電が発生し、全世界の原子力発電所で電源が喪失する。まさに恐怖のストーリーである。ちなみに1989年のフレアは、ケベック州で9時間の大停電を引き起こした。600万人に影響を及ぼし、10億円の被害を与えたという。
 筆者は、太陽とよく似た恒星でスーパースレアが起きていることを雑誌「Nature」で公表した。しかし査読の過程で、地球で起こる可能性を言及した箇所については、「社会を恐怖に陥れる」「太陽で起きる確証がない」との理由で掲載を拒否された。
 太陽の黒点の話も興味深い。このところ太陽の黒点は少ない時期が続いているという。この結果、地球は寒冷化に向かう可能性がある。二酸化炭素地球温暖化の元凶と吊し上げにあっているが、筆者は寒冷化の歯止めになっているのではないかと指摘する。