2011-01-01から1年間の記事一覧
人間環境学博士で、立命館大の研究員と同志社大非常勤講師を務めている筆者が、大学院と大学院卒業生の窮状を切々と訴えた書。博士号を取得しても就職できない状況や、非常勤講師という低賃金で不安定な雇用形態、東大卒の博士の就職率が約40%など、本当な…
バブル崩壊に伴う銀行危機(1997年)から2008年のリーマンショックを経て現在に至るまでを対象に、日本における企業統治の変遷を追った書。経産省系の経済産業研究所の研究成果をまとめている。社外取締役、執行役員制度、株式の持ち合い、海外機関投資家の…
世界的には5000年以上、日本でも1650年以上の歴史を持つ放鷹・鷹狩。日本では徳川家康の時代に大きく発展した。鷹狩に際して、人鷹一体となって狩りを遂行するのが鷹匠である。本書は、早稲田大学の卒業研究をキッカケに鷹匠に興味を持ち、ついには諏訪流鷹…
期待はずれに終わった書。いまやMac派に戻った評者だが、かつては長期間にわたってThinkPad愛好者だった。家族にも勧めていた結果、3台のThinkPadが家で稼働していた時代もあった。「トラックポイント」は、ノート・パソコンのポインティング・デバイスの最…
世界の核災害調査を手掛けた札幌医科大学教授(専門は放射線防護学)が、福島原発事故の影響を受けている地域の環境と健康を実地調査した書。結論は、福島の放射線は心配なレベルではなく、健康被害はないというもの。著者がこれまで調べた中国やロシアの核…
人はなぜ赤の他人を助ける、もっといえば自分が相手よりも損をするような利他的な行動をするのだろうか。その根源的な理由を、人間行動進化学を中心に生物学、心理学、経済学、哲学の研究成果をもとに探った書。なぜ人間は利他的なのか、何が利他的行動を起…
この手の蘊蓄本は当たり外れが大きい。あまりにも下世話だったり、内容が薄かったりしてガッカリすることが少なくない。本書の評価は可もなく不可もなくといったところ。一つのエピソードに2ページ前後を割き、テンポよく江戸時代の風習や風俗を紹介している…
1980年に登場したウォシュレットは世紀の発明である。外出先のトイレで、ウォシュレットがあればホッとするのは評者だけではあるまい。本書はウォシュレットだけではなく、暖房便座、防臭装置、汚れない便器、節水装置など数々の日本発の技術が生まれるまで…
方言に対する日本人の価値観の変遷を各種の意識調査、テレビ番組や文学作品の分析などから追った書。表題の「方言コスプレ」とは、大阪人でもないのに吉本芸人のように大阪弁で突っ込んだり、高知出身者でもないのにドラマの坂本龍馬のような言葉を使ったり…
iPhone 4S発表の翌日10月5日に逝去したスティーブ・ジョブズの評伝。600ページを超える大著で、読み終えるまでにほぼ1カ月かかってしまったが、それだけの価値は十分だ。本書が出版されたのは、当初の予定から1カ月前倒しの10月25日。日米でほぼ同時発売とい…
世界市場における競争条件が変わったにもかかわらず、日本企業は対応できていない。では、どうすれば活路が見出せるのか、どうすれば持続的な成長を成し遂げられるのかを経済産業省の官僚が説いた書。正直なところ得るところは少ない。日本の官僚はこの程度…
身近な病気「カゼ」について、微に入り細を穿って解説した書。サイエンスライターである著者が、カゼとは何か、かかったらどうしたらいいのか、かからないための工夫、カゼ薬や民間療法の効果について、最新の研究や研究者への取材を交え紹介する。すごい驚…
勲章について、制度創設の経緯や歴史、制度の中身、人選の方法、製造現場、売買の実態などについて詳説した書。新聞に叙勲の記事が出ていても読み飛ばしていたが、毎年春と秋に約4000人が勲章を授与されているという。そんなに多いとは、ちょっと驚きである…
メインタイトルからはハッキリ分からないが、モノがあふれる時代に企業が生き残るためのマーケティング法を説いた書。実は原題「Differentiate or Die」が内容をよく表している。失敗とは言えないが、邦題には一考の余地があったと思う。差別化は企業が常に…
原子力、オリンピック招致、事業仕分け、選挙、道路建設、捕鯨問題などを切り口に、世論はどのように形成されていったのか、民意とは何かを追った書。巨額の広告宣伝費、誘導的な世論調査、営利的な非営利団体を切り口に関係者を取材して実態に迫っている。…
人間の心の動きを、生物の進化に基づいて考える「進化心理学」の入門書。進化心理学は1990年代から注目され始め、心の動きが形成された経緯を進化論に基づいて解釈する学問である。例えば、壁の汚れを幽霊だと間違える、怒りの感情を損と知りながら爆発させ…
ウォール街で現在起こっているデモを予言するような内容を含んだ良書。一部の富裕層に富が偏在し、国家の経済成長を支える中間層が喪失しかねない米国の状況に警鐘を鳴らすと同時に、明快な処方箋を書いている。筆者はクリントン時代の労働長官など民主党政…
タイトルと内容が異なっている書。タイトルの引かれて購入すると、評者のように期待はずれに終わるかもしれない。江戸時代についての蘊蓄話が本書の中心である。時代劇の時代考証はめちゃくちゃといった話が次々に登場する。エンタテイメントとしては悪くな…
死のテレビ実験〜人はそこまで服従するのか〜、クリストフ・ニック著、ミシェル・エルチャニノフ著、高野優・訳、河出書房新社、p.309、¥2100 テレビ番組を模して2009年に行われた心理学実験(服従実験)の詳細を紹介した書。人間が権威に弱いことと、テレ…