勲章〜知られざる素顔〜、栗原俊雄、岩波新書、p.224、\756
勲章について、制度創設の経緯や歴史、制度の中身、人選の方法、製造現場、売買の実態などについて詳説した書。新聞に叙勲の記事が出ていても読み飛ばしていたが、毎年春と秋に約4000人が勲章を授与されているという。そんなに多いとは、ちょっと驚きである。勲章制度には法律の裏付けがないとか、文化勲章と文化功労者との関係など知らないことが満載である。蘊蓄好きの方にお薦めの1冊である。
勲章制度の誕生をめぐる裏話は興味深い。時は140年ほど前のパリ万博。薩摩藩は独立国として国際社会に認められるために「薩摩琉球国勲章」をフランス政府高官に進呈した。これが日本の勲章制度の始まりと言われる。幕府側でも「葵勲章」を作ったが、倒幕とともに幻となったという。
このほか本書では、戦前と戦後における勲章制度をめぐる動き、選考の過程、受勲者や拒否者の素顔、叙勲するための涙ぐましい運動、勲章の製造現場、売買の実態、勲章を身につけるときのドレスコードなどを紹介する。