独自性の発見〜消費者の心をつかむ唯一の方法〜、ジャック・トラウト著、スティーブ・リヴキン著、吉田利子・訳、海と月社、p.312、¥1890
メインタイトルからはハッキリ分からないが、モノがあふれる時代に企業が生き残るためのマーケティング法を説いた書。実は原題「Differentiate or Die」が内容をよく表している。失敗とは言えないが、邦題には一考の余地があったと思う。差別化は企業が常に努力しなければならない最も重要な戦略だと、筆者は強調する。そして、他社との差別化で効果がある「真の独自性」を実現する方法を豊富な事例を駆使しながら紹介する。具体例が多いのでマーケティングに興味のある方にお薦めである。
とにかく著者は自信満々である。あのマイケル・ポーターに対して、「独自のポジショニングの必要性について語るが、どうすればよいのか助言してくれない。戦略的継続性とか戦略的ポジショニングの深化、トレードオフの最小化などについて語るが、これでは差がつかない」と断じる。広告会社も「広告会社が重視するのはアートであり、科学的姿勢ではない。それでは差はつかない」と切って捨てる。
筆者が推すのは「USP(Unique Selling Proposition)」。USPの要諦は三つ。第1は、広告を見る人に「この商品を買ったら、こういう利益がありますよ」と知らせること。第2は、消費者への提案は競争相手が出さないか、出せないものであること。第3は消費者の気持ちを動かせる力があること。いずれも当たり前のことだが、実現できている例は多くない。少ない成功例と多くの失敗例を筆者は次々に取り上げ、ポイントを手際よく解説する。
筆者が強調するのは「科学的・論理的であるべき」という点。マーケティングの世界で論理的な議論に出会うことはめったになく、これこそが失敗する原因だと自らの経験をもとに分析している。