2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

忘れ去られたCPU黒歴史〜Intel/AMDが振り返りたくない失敗作たち〜、大原雄介、アスキー・メディアワークス、p.136、\1470

評者が記者として現場を走り回っていたのは約20年前。専門分野はマイクロプロセサだった。筆者の大原雄介氏と、インテルやAMDの記者会見の場でよく一緒になったのを記憶している。本書は、マイクロプロセサの失敗作(黒歴史)をその背景とともに紹介した書で…

100のモノが語る世界の歴史2〜帝国の興亡〜、ニール・マクレガー、東郷えりか・訳、p.325、\2205

大英博物館の所蔵品に歴史を語らせるシリーズの2冊目。本書の対象は紀元前300年から1500年まで。想像をたくましくして太古の人類を描いた第1巻ほどのインパクトはないが、ロゼッタストーンやアレクサンダー大王の金貨といった有名どころが登場するので、それ…

障害者の経済学、中島隆信、東洋経済新報社、p.248、¥1680

先日書評した「刑務所の経済学」の筆者が、「第49回 2006年度 日経・経済図書文化賞」を受賞した出世作。この著者には「相撲の経済学」「お寺の経済学」とついつい誘われるタイトルをつけた本が多い。なかなかのマーケティング巧者である。本書には経済学と…

オリンパス症候群〜自壊する「日本型」株式会社〜、チームFACTA、平凡社、p.288、\1680

オリンパス事件をスクープした月刊誌FACTAの発行人・阿部重夫を中心にしたジャーナリストと経済学者が、日本社会に巣食う問題点に切り込んだ書。20年前に端を発したオリンパスの不正が、長年にわたって露見しなかった理由を切れ味よく暴いている。阿部のジャ…

日本の幸福度〜格差・労働・家族〜、大竹文雄、白石小百合、筒井義郎、日本評論社、p.284、\3150

アンケート調査と経済学的手法によって、幸福度を定量分析した書。日本だけではなく米国の幸福度にも言及し、日米の比較はなかなか興味深い内容となっている。多くは直感と合致するが、「へ〜」と意外感のある分析も含まれ、堅目の学術書にしては楽く読める…

ビジネスマンのための「行動観察」入門、松波晴人、講談社現代新書p.272、\798

人間の行動をつぶさに観察して、行動の裏に隠されている潜在ニーズや課題、ノウハウを見出す「行動観察」を紹介した新書。行動観察をマーケティングや店舗設計、人材育成、工場の生産性向上などに役立てた事例が実に興味深い。類書が出版されていないか、つ…

FabLife〜デジタルファブリケーションから生まれる「つくりかたの未来」〜、田中浩也、オライリージャパン、p.224、\2310

パーソナル・ファブリケーションの入門書。パーソナル・ファブリケーション(工業の個人化)とは何か、歴史、世界的な活動状況、日本の状況、14週にわたる講習の内容などについて解説している。初めて知った話が多く、興味深い内容にあふれている。日本で普…

なぜ、日本企業は「グローバル化」でつまずくのか〜世界の先進企業に学ぶリーダー育成法〜ドミニク・テュルパン、高津尚志、日本経済新聞出版社、p.211、\1890

スイスに本拠を置くビジネススクールIMDの学長と日本代表が、日本企業の戦略を分析するとともに、今後に向けた処方箋を書いた本。ビジネススクールらしくネスレ、GE、ヴェオリアなどの事例をあげながら、日本企業に足りない部分を指摘する。強化すべきポイン…

あなたは未来、あなたは可能性、吉田和正、日経BP社、p.175、\980

インテルの吉田社長の書。タイトルから推察できるように10代の若者向けである。「英語は必要か」「世の中はどうなるか」「どんな仕事がいいか」といった疑問に答えるとともに、吉田社長が面識のある著名人との対談を収録している。ちなみに吉田社長には取材…

ヒューマン〜なぜヒトは人間になれたのか〜、NHKスペシャル取材班、角川書店、p.423、\1600

「人間とは何か」を探ったNHK特集を単行本化した書。心の進化、道具、農耕、お金と大きく四つの切り口で人間の進化を追っている。構想からTV放映まで12年を費やしたプロジェクトである。考古学はもちろん、心理学や遺伝子学、脳科学、経済学の最新の知見をカ…

医者は現場でどう考えるか、ジェローム・グループマン、美沢惠子・訳、p.311、¥2940

「なぜ医者は診断を間違えるのか」「誤診しない医者の特徴は何か」について、ハーバード大学医学部教授が論じた書。興味深い話が満載である。3年で5人の医者を渡り歩いて痛みの原因を突き止めた自らの体験も含め、事例が豊富である。こんな病気があるのか、…

「ガード下」の誕生〜鉄道と都市の近代史から、小林一郎、祥伝社新書、p.232、\819

鉄道高架の下に広がる空間「ガード下」を訪ね歩いた書。ガード下がどのように誕生し発展したのか。法律(権利関係)はどうなっているのか、住所表記はあるのか、などのエピソードを満載する。系統だった調査ではないのでガード下の網羅性については少々疑問…