「ガード下」の誕生〜鉄道と都市の近代史から、小林一郎、祥伝社新書、p.232、\819


 鉄道高架の下に広がる空間「ガード下」を訪ね歩いた書。ガード下がどのように誕生し発展したのか。法律(権利関係)はどうなっているのか、住所表記はあるのか、などのエピソードを満載する。系統だった調査ではないのでガード下の網羅性については少々疑問が残るが、興味深い話が次から次へと登場するのは確か。素直に楽しめばいい本だろう。なぜか大阪の美章園や神戸・元町のガード下など、評者にとって思い出深い場所を多く取り上げている。つい肩入れしたくなる。
 建築関係の仕事に携わっている筆者なので、意匠や構造に関する解説が本書の売り物の一つ。プロの指摘は「さすが」と思わせる。日ごろ使っている駅の知られざる“見所”を教えてくれる。通勤に使われている駅があれば、駅の外に出て観察されてはどうだろう。例えば首都圏では、有楽町、秋葉原、上野〜御徒町、浅草橋、両国、日暮里のガード下が登場する。
 ちなみにガード下というと、まず思い浮かべるのは「飲み屋」だろう。評者だと、有楽町の風景が頭に浮かぶ。しかし本書を読むと、ホテルやブティック、アトリエ、神社、住宅、保育園など、さまざまな施設がガード下に入っていることがわかる。ガード下のホテルだと振動が気になるところだが、免振技術が進む気にならないレベルにあるという。ちなみに、このホテル。ディズニーランドのある舞浜駅に存在する。