卵子老化の真実、河合蘭、文春新書、p.253、¥893


 先日の書評で取り上げた「産みたいのに産めない〜卵子老化の衝撃〜」と同じテーマを、“日本で唯一の出産ジャーナリスト”が扱った書。20年あまり出産を取材してきた著者らしく、取り上げる内容は的確で読み応えのある内容に仕上がっている。「産みたいのに産めない」がNHKらしく具体的事実でぐいぐい押してくるのに対して、本書は手練のジャーナリストらしくトピックスを適切に配置して読者を引き付ける。図版のよさも、本書の特徴の一つである。卵子老化に興味を持たれた方は、両方の書を読むことをお薦めする。
 本社は4章構成をとる。第1章の「何歳まで産めるのか」で35歳以上の妊娠の難しさを統計データや歴史的背景に言及しながら指摘する。驚くのは明治女性の高齢出産である。45歳以上の出産数は現代の20倍を超えている(ただし明治の女性は、若いうちに最初の出産を終えている)。第2章は「妊娠を待つ」。不妊治療の現場を問題点とともに明らかにしている。第3章では「高齢出産」を扱う。特に、興味深いのが出生前診断についての記述だ。この対処が難しい問題に対して。妊婦がどのように考え、どのように行動しているのかを取材をもとに明らかにする。第4章は「高齢母の育児」で、陥りがちな問題とともに、高齢であることのメリットにも言及する。視点がユニークで思わず唸ってしまう。