100のモノが語る世界の歴史 1 文明の誕生、ニール・マクレガー、東郷えりか・訳、筑摩選書、p.285、\1995
大英博物館が250年にわたって収集したモノから100点を厳選し、それらに世界史を語らせるという企画。歴史好きには堪らない内容である。数点の写真と10ページほどの文章の組み合わせも絶妙で、テンポよく読み進むことができる。歴史好きでなくても十分楽しめるので、多くの方にお奨めである。
元々は2010年に放送された英国BBCのラジオ番組。さすがBBCである。3巻シリーズの第1巻は、200万年前から紀元前300年までが対象。記録がろくに残っていない時代なので、筆者は想像をたくましくして歴史をよみがえらせている。一つの出来事を証明するモノよりも、多くの物語を語る所蔵品を優先的に選んだという方針が功を奏し、いずれの所蔵品もなかなか雄弁である。
本書は、大英博物館らしくミイラから始まる。エジプトで出土した木製のミイラ棺をまず紹介する。色彩鮮やかな美しい写真で度肝を抜かれるだろう。その後も見所が多い。例えば、フランスで出土した、マンモスの牙を使った「泳ぐトナカイ」の彫刻。氷河期の人間が、こうした彫刻を彫っていたことを想像するだけで楽しい。そもそもマンモスの牙製の彫刻というところに素直に驚かされる。それにしても本書に登場する文物の造形の美しさは尋常ではない。