フェア・ゲーム、ヴァレリー・プレイム・ウィルソン、高山祥子・訳、ブックマン社、p.287、\1800
筆者のヴァレリー・プレイム・ウィルソンはCIAの元諜報員。夫は元駐ガボン大使である。いずれも体制側の人間だが、夫のイラクの大量破壊兵器製造を否定する寄稿をキッカケに、夫婦はブッシュ政権から目の敵にされる。妻はCIA諜報員であることをリークされ、夫とともにマスコミの標的となる。ホワイトハウスが仕掛けた工作の数々や、政権の片棒をかつぐ一部マスコミの実態を本書は暴露する。米国の一流紙や著名ジャーナリストがこんなことをするのかと少々驚く。なんとも凄まじい話の連続である。映画のような実話という表現がピッタリ。本書は実際、映画『フェア・ゲーム』のネタ本となっている。カタカタの人名を頭に入れるのは一苦労だが、暇つぶしに読むのには悪くない1冊である。
CIAの機密(この場合は諜報員の実名)を暴露するのは犯罪である。そのためブッシュ政権の陰謀は結局、法廷の場で明らかにされてしまう。本書を読むと、ブッシュ政権のレベルの低さを改めて感じてしまう。本書が衝撃的なのは、CIAの検閲が入った“黒塗り”の箇所がいくつも登場すること。さほど機密と関係なさそうな部分なのだが、諜報員の足跡を消すための措置なのだろう。それにしても実に生々しい。