続・日本の歴史をよみなおす、網野善彦、ちくまプリマーブックス、p.204、¥1260


 従来の日本史観を覆す網野史観を展開する歴史学者網野善彦。前作「日本の歴史をよみなおす」が実に興味深い内容だったので続編も購入。本書も期待を裏切らない好著である。常識として考えてきたことが、事実と異なっているという指摘は新鮮である。
 続編で取り上げるのは、農民を中心に置いた日本史観の問題点。具体的には、「日本の中世や江戸時代は本当に農業社会だったのか」である。筆者によると、江戸時代や中世は商業・金融が有効に機能した社会で、非農民はけっして少数派ではなかったという。また商業や金融の担い手として女性や僧侶が果たした役割についても史料を基に指摘する。
 確かに中世や江戸時代というと、民衆のほとんどを農民が占めていたようなイメージを持ちがちだ。これは、歴史家が「百姓=農民」と思い込んで史料を読んだために生まれた誤解だと筆者は指摘する。畳み掛けるように「水のみ百姓=土地を持たない貧しい農民」の誤りを取り上げる。水のみ百姓は廻船業などを営み豊かだったため、農業を手がける必要はなかったというのが筆者の主張である。