スタートアップ!〜シリコンバレー流 成功する自己実現の秘訣〜、リード・ホフマン、ベン・カスノーカ、有賀裕子・訳、日経BP社、p.304、¥1680
読むと元気が出る書。「心配の多くは杞憂に終わる。案ずるより産むが易し。まず行動を起こせ」が全体を通してのメッセージである。セレンディビティ(偶然の幸運)は、動き回っているときにやってくるからだ。筆者はビジネスパーソン向けSNS「LinkedIn」の共同創業者。自らやシリコンバレーの起業家たちの事例に基づいた成功の秘訣を伝授する。起業家たちの逸話が適度に散りばめられているので楽しく読める。気分転換にお奨め書である。
米国西海岸のビジネス作法が色濃く出ており、日本とは状況が違うという声が聞こえてきそうだが、読後の印象は悪くない。例えば、リスクは人生の一部という考え方は共感が持てる。人間は本質的にリスクを避けるようにできている、しかしリスクは、自分が思うほど大きくないと筆者は説く。起業家だけではなく、多くの方に役立つ情報が詰まっている。ここまでポジティブだと天晴れという気持ちになれるだろう。
このほか「自らの人生を永遠のベータ版と位置づけよ」と筆者は語る。正式版に向けて、前進あるのみとはっぱをかける。ビジネスパーソンとしてのアイデンティティは生来備わっているものではなく、行動を起こし、経験を積むなかで生まれてくると説く。このとき、ビジョンと資産(能力)、市場ニーズのバランスをとることが重要だと筆者は指摘する。行動を起こすときに筆者が勧めるのが「ABZプランニング」。まずAプランから始める。不調な場合はBプランに切り替える。AもBもダメなときに緊急避難として駆け込むのがZプランである。最悪を想定して準備し、楽観的に行動することが肝要だと説く。