サービスサイエンス〜新時代を拓くイノベーション経営を目指して,亀岡秋男監修,北陸先端科学技術大学院大学MOTコース編集委員会,サービスサイエンス・イノベーションLLP,エヌ・ティー・エヌ,p.288,\1900

 最近ちょっと気になる言葉「サービスサイエンス」。世の中,サービスへのシフトが進んでいるのは言を俟たないところ。実際,いまやGDPの70%が第3次産業が担っている。にも関わらず生産性はなかなか上がらない。日本は米国の半分という話もある。そのサービスをエンジアリングやサイエンスの視点から見ていこうというのが,IBMが提唱するSSME(Service Sciences Management and Engineering)である。

 米国ではサービスサイエンスの学会が開かれているようだが,日本での認知は今一歩。バズワードを次々と生み出す米IBMが言いだしっぺ(2004年に提唱)ということもあり,「またか」という気分も分からぬではない。ちなみに,米IBMはサービスをこう定義している。『サービスとは,価値を創造し取得する,提供者と顧客の相互作用である』。

 本書はそのサービスサイエンスを初歩から説き起こした学術書。冗長な感じもあるが頭の整理に役立つ。産業界の現状を反映していない表現があるのは大学の先生の愛嬌だろう。もっともサービスサイエンス自体は発展途上というのが,本書を読んだ印象だ。うまく整理できておらず,すっと腑に落ちる感じではないのは少々残念である。