生き物たちの情報戦略〜生存をかけた静かなる戦い〜、針山孝彦、化学同人、p.246、\1800

 魅力的なタイトルに惹かれ購入。知的好奇心が満たされるだろうといった期待をもって購入したが、読後感は今一歩だった。生物の行動学を分かりやすく解説しているのだが印象に残る部分が極めて少なかったのが残念である。結局、タイトルと内容とのギャップが印象に残ってしまった。
 生き物を扱った本は、洒脱さを備えた面白いものが多く著者から見れば激戦区である。その激戦区に打って出るには力不足の感があり、著者の世界に引き込むまでに至っていない。何となく自己満足や楽屋落ちで終わっている。
 取り上げている内容自体は興味深いものが多い。たとえば「時どき鳥」の話。序列が一番下だったメスがリーダー格のオスの伴侶に選ばれると、それまで卑屈だった振る舞いが一変して、横柄で偉そうになるという。どこかの国の高級官僚夫妻の行動と非常に似ていて苦笑させられる。このほか南極での越冬やケニアでの体験談やエピソードを読むと、著者本人はキャラが立っていそうなだけに残念である。