The Black Swan:The Impact of the Highly Impropable,Nassim Nicholas Taleb,Random House,p.366,$26.95

 BusinessWeekのベストセラー欄に顔を出しているので気になって購入したが,全編が修辞的な文章のため読むのに大苦戦。筆者のナシーム・ニコラス・タレブ(Nassim Nicholas Taleb)の著作には9.11(2001年9月11日)直前に出版された「Fooled By Randomness」があるが,日本語訳「まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」が登場したのは今年1月。翻訳する価値に乏しいのか,翻訳に難渋したのか・・・。
 世の中を動かすような事象は不規則でランダムに発生し,予知は不可能というのが著者の主張である。だから筆者は,この事象を白鳥ならぬBlack Swanと呼んでいる。経済学や自然科学では正規分布を仮定して発生確率を弾き出しているが,Black Swanはサンプル数が少なすぎて正規分布による予測はあてにならない。Black Swanの現象は抽象化すると,社会的な事象が本質的に持っている複雑性を覆い隠してしまうので本質が見えなくなってしまう。シミュレーションをどれだけ精緻に行っても,未来は正しく予想できないのだ。それぞれの事象を個別に分析して,“物語り”にすることが重要。科学よりも小説の方が真実に近い,ジャーナリストと科学者は役に立たないというのが著者のご託宣である。