政治と秋刀魚〜日本で暮らして四十五年〜,ジェラルド・カーティス,日経 BP 社,p.251,¥1600

minami_chaka2008-06-09


 このところテレビで顔を見ることの多い,コロンビア大学教授ジェラルド・カーティスのエッセイ。1964年の来日以来,40年あまりにわたって観察している日本政治と日本社会について,ときに米国と対比しながら書きつづっている。妙なクセのない,優しい文章である。
 1964年といえば池田勇人が退任し,佐藤栄作が長期政権を敷いた最初の年。自民党社会党がするどく対立していた時代である。その後,選挙制度中選挙区制から小選挙区制に変更になったり,細川政権ができ一度は野に下った自民党が,社会党と組むというアクロバティックな方法で政権党に返り咲いたり,政治的には起伏の多い40年だったように思う。この間,総理大臣の数は20人に上る。政治学者なので不思議はないが,ジェラルド・カーティス佐藤栄作から福田康夫にいたる20人の総理大臣のうち19人と面識があるという(唯一の例外は69日で辞任した宇野宗佑)。彼らに対する人物評は少々甘口だが,本書の特徴に一つといえる。ちなみに福田康夫に対する評価はけっこう高めである。
 日本社会については古き良き日本や日本語の美しさに言及する。日本通の外国人の著作にありがちな内容だが,もっともな指摘も多い。この書評で取り上げた山岸俊男の「日本の「安心」はなぜ消えたのか」と通底する議論も展開している。