ほんとうの環境問題,養老孟司,池田清彦,新潮社,p.189,¥1000

minami_chaka2008-06-16

 環境問題で科学的に不確かな説がまかり通っていることと,環境関係で本来行うべきことがなおざりにされている点を,“虫”屋の二人の学者が憤っている書。現在の議論は枝葉末節ばかりに集中しており,本当に大切なことに切り込んでいない。全編が「あほ馬鹿間抜け環境問題」といったトーンで貫かれている。ただし養老は医学者,池田は生物学者ということもあって,威勢がいいのだが,何となく尻切れトンボで最後の最後のところでは断言しきれていないところが弱い。
 環境問題や排出権問題で,国益を優先して戦略的に行動している欧米に比べ,日本の外交はお人好しすぎると繰り返し警鐘を鳴らしている。そもそも省エネ先進国の日本は,今以上の省エネ(そもそも糊代が小さく効率が悪い)を進めるよりも,その技術を世界中に展開することを優先すべきだと述べる。いい格好をしたいだけの「洞爺湖サミットなどやめちまえ」と締めくくる。