日本の歴史:日本の原像,平川南,小学館,p.355,?2520

minami_chaka2008-06-17

 文献,考古学,民俗学,国語・国文学,さらには自然科学も総動員して古代社会の実像に迫ろうという意欲作。「新視点古代史」というサブタイトルも納得できる内容である。本書の最大の面白さは,考古学とのリンクにある。物証に基づく論考には説得力があるし,古代遺跡や遺物にはそもそもロマンがあって楽しい。火山の噴火で埋もれた村から,古代の生活ぶりを復元する話など,読んでいてワクワクする。
 本書はまず「天皇」や「日本」という言葉の生い立ちにふれる。次いで米作,都市作り,特産物,交通(港と道),国語と文字,民俗信仰などの話題を展開する。それぞれに興味深い話が盛り込まれている。特に漢文・漢語から和文への変遷を考古学的資料から追ったり,文字の習熟度を書き手の官位と関連づけた下りはなかなか読ませる。