創造的破壊とは何か日本産業の再挑戦,今井賢一,東洋経済新報社,p.270,\3360

minami_chaka2008-09-08


 崖っぷちの日本をどうすれば再生できるのか。日本企業や産業への処方箋が簡単に見つかる訳はないが,シュンペーターの「創造的破壊」やクリステンセンの「イノベーションのジレンマ」を前提に,この命題への解を探るのが本書の目的である。驚くような画期的議論がなされている訳ではないが,老練な今井賢一らしく手堅くまとめている。採点すれば75点といったところだろう。
 今井が強調するのは,情報化時代におけるプラットフォームやインタフェース,サービス指向の大切さである。このあたりは,現状認識も提言も10年以上も前から雑誌では扱っていた話であり新味はない。逆に言えば,10年以上も前から危機的な状況を雑誌では訴えていたのに,産業界を変えるに至らなかったという意味で忸怩たる思いを感じざるを得ない。惜しいのは推敲が不十分なところ。やたらと誤字脱字が登場する。とりわけ,米Xerox PARCをPARKと表記するのはあまりにお粗末。