サブプライムを売った男の告白〜米国住宅金融市場の崩壊〜,リチャード・ビトナー著,金森重樹・監修,金井真弓・訳,ダイヤモンド社,p.280,¥1680

minami_chaka2008-12-20


 米国の金融危機から世界規模の景気後退にいたる危機の連鎖は,そもそも米国におけるサブプライムローンの破綻(住宅バブルの崩壊)に端を発したものである。本書は,サブプライムローンの貸し手だった筆者がその経験に基づき実態を暴いたもの。融資現場での融資基準とその抜け穴,不正の手口を具体的に語っている。暴露モノのようにも読めるが,分析もそこそこなされており中身は比較的まともである。有効性や妥当性はよく分からないが,解決策にも言及している。
 今回の惨事は,起こるべくして起こったということを本書を読むと実感できる。米国の住宅バブルやサブプライムローン破綻の原因の一つとしてモラルの欠如が指摘されているが,仕組み自体に不正を誘発する要因が含まれていたいうべきだろう。身の丈を越えた浪費や拝金ブームに遅れてはならじと,借り手,貸し手,その間に入るブローカーが寄ってたかって不正に手を染めた結果がバブル崩壊である。しかも証券化の仕組みによってサブプライムローンの欠陥は隠蔽され,さらには格付け会社によってお墨付きを得ることで,厄災は世界規模に広がっていった。