未来のモノのデザイン〜ロボット時代のデザイン原論〜,ドナルド・A・ノーマン著,安村通晃/岡本明/伊賀聡一郎/上野晶子・訳,新曜社,p.296,¥2730

minami_chaka2009-03-11

 米Northwestern University教授で元・米Apple副社長,認知科学者として知られるドナルド・A・ノーマンの新著。人間と機械の最適なコミュニケーション(対話)についての議論を中心に,認知科学とハイテクの最新状況を紹介する。ここでいうハイテクには,クルマ,カーナビ,ロボット,スマートホームなどが含まれる。ノーマンといえば『誰のためのデザイン』の筆者として有名。評者も『誰のためのデザイン』以降,ほとんどの著作を読んでいるが,本書の評価はそこそこレベルといったところ。ノーマン・ファンとしては多少物足りなさを感じる内容である。
 デザイナの役割を重要性するところはノーマンらしい。デザイナは,分野を超えてイノベーションできるジェナラリストでなければならない,と主張する。デザイナの教育にはビジネススクールのやり方が合っているという主張も興味深い。今はデザインの科学の時代というのがノーマンの見立てである。
 もっとも,「自然に学ぶ粋なテクノロジー」に続いて読んだせいか,ノーマンの技術志向の強さが際だって感じられる。もちろん技術を絶対視している訳ではなく,ハイテクを盲目的に信頼することの問題点や危険性,自動化の限界といった点にも目配りしている。例えば,技術志向が強い技術者が陥りやすい罠について,具体的な事例を引き合いに指摘する。納得性の高い議論の進め方はさすがである。