Grown Up Digital:How the Net Generation is Changing Your World HC ,Don Tapscott,McGraw-Hil,p.384,$27.95

minami_chaka2009-05-24

 のんびり読んでいるうちに翔泳社から日本語版「デジタルネイティブが世界を変える」が出てしまった。少々くやしい。本書で展開されるのは,日本を含む世界12カ国を対象した6000人に及ぶ400万ドルを費やした若者調査に基づくネット社会論。豊富なデータを使って説得力を増している。インターネットやパソコン,携帯電話と違和感なく付き合う世代が作っていく政治や文化,社会,ネット世代に向けた教育法やマネジメント法,マーケティング術など広範囲の話題を取り上げる。各章の最後には,旧世代(親や企業の管理職,政治家など)に向けて,ネット世代と付き合うヒントを掲げる。米国の本らしく冗長な感じもあるが,そこそこ面白いし,英語もプレーンなのですいすい読める。
 著者のTapscottは「ウィキノミクス」の共著者。当然,この分野はお手の物である。1998年には本書の前身ともいえる「Growing Up Digital: The Rise of the Net Generation 」も上梓している。前著はAmazon.comでランキング1位になったというが,今回は「目から鱗」の部分が少ないだけに,2匹目のドジョウは厳しい気がする。ちなみに筆者が“Net Genration”と定義するのは16歳〜29歳で,特徴として以下の八つを挙げている。
・Want Freedom
・Love to Customize
・Intense Scrutiny
・Look for Corporate Inregrity and Opennness
・Entertainment and Play in their Work,Education and Social Life
・Collaboration and Relationship Generation
Need for Speed
・Innovator
 本書を読むと,マスメディアの世界の先行きに危機感が募る。出版(版を出す),放送(送りっ放し),広告(広く告げる)という旧来型マスメディアとは正反対の世界が本書には描かれている。このほか本筋から外れるが,米国の大学教育と家庭像を扱った個所は興味深い。先入観とえらく違う。例えば米国の親は早い時期に子離れ(子どもは親離れ)する印象があったが,どうも違う。最近は親に寄生するパラサイト・シングルが普通のようだし,子どものことが気になり上空をホバリングする“ヘリコプター・ペアレント”なる親も登場したようだ。