全集日本の歴史 10:徳川の国家デザイン,水本邦彦,小学館,p.370,¥2520

minami_chaka2009-06-14

 タイトルには徳川となっているが,江戸時代の国家アーキテクチャを,豊臣秀吉の刀狩りや検地などからの流れを踏まえ論じている。江戸時代くらいになると知っていることが多いはずなのに,「そんなことがあったのか」「そうだったのか」と意外な発見の多い書である。
 最初に取り上げるのは京都の話。徳川家康だけではなく,豊臣秀吉織田信長と京都とのかかわりを論じる。現在の二条城は2代目で初代は信長が創建したとか,聚楽第は秀吉が京都の首都化のために打った布石といった話は本書で初めて知った。江戸の都市計画の話も興味深い。水問題やごみ処理問題,防火/消火のための仕組みなど,身近な話題が多い。庶民の暮らしにスポットを当てているのも本書の特徴である。荒廃地や新開地を抱えた領主や村が,積極的に農民をリクルートしていたという話も面白い。封建時代は身分制度に縛られ,庶民の移動はもってのほかというイメージがあるが,どうも実態は大きく異なっていたようだ。
 庶民を縛った村の掟は,ここまで決めるかといった感じである。就寝時刻や起床時刻を定めるほか,「作物は暮れ六つ(午後6時)以後は取り入れてはいけない」「落ち葉は2月1日から霜月1日までいっさい掻きとってはいけない」といった掟もある。庶民の暮らしぶりを垣間見ることができる歴史書である。