日本人の好きなもの〜データで読む嗜好と価値観〜,NHK放送文化研究所世論調査部,生活人新書,p.212,¥735

minami_chaka2009-06-22

 NHK放送文化研究所が全国300地点,3600人(有効回答は2400人ほど)を対象に行った調査をまとめたもの。結果の羅列が中心で,男女別や年層別,地域別の少しばかりの分析というスタイルをとる。前回調査は1983年とあって,変わりゆく日本人の価値観や生活を定量的に裏付けた「新・日本人論」を期待したが,あてが外れた。「日本人は好き嫌いにこだわらなくなった」可能性を示唆しているところが目新しい程度。もう少し突っ込みが欲しいところだが,本書の趣旨とは違うのだろう。生のデータを提示するので,「皆さんそれぞれ考えてね」というスタイルである。
 調査結果から得られた平均的日本人像は「犬を連れて,桜を愛でて,すしを食う」。違和感のない結果だが,当たり前すぎてつまらないとも言える。調査は54項目について,選択肢方式と自由回答方式を組み合わせて回答を求めるもの。前者には62もの選択肢(複数回答可能)を用意した設問もある。好きな食べ物,飲み物,スポーツ,プロ野球チーム,タレント,山,動物,植物,音楽,方角,色といった項目がずらりと並ぶ。さぞかし,回答する側の負荷は大変なものだったろう。
 圧倒的に支持を得ているのが果物のイチゴと余暇にすることのテレビで,75%の支持率を得ている。好きなスポーツ選手ではイチローがすべての年齢層で,男女を問わず1位になっているのが凄い。好きな国のランキングは意外な結果になっているが,それは読んでのお楽しみである。しかし,さすがに54項目も並ぶと飽きてしまう。