襲われて〜産廃の闇,自治の光〜,柳川喜郎,岩波書店,p.291,¥2205

minami_chaka2009-10-20

 産廃処分場問題に絡んで,当時の市長が襲われた岐阜県御嵩町(みたけちょう)。襲撃事件から13年を経て,当事者の柳川喜郎町長が事件までの経緯とその後を綴ったのが本書である。実体験に基づく記述とあって,迫力満点な書に仕上がっている。岐阜県との対立,利権に群がる輩が続々登場するなど刺激的な内容にあふれている。読み応え十分である。なぜ今になって手記を上梓したのか事情はよく分からないが,襲撃事件の時効が2011年10月に迫っていることが動機の一つになったのかもしれない。
 本書の特徴の一つが,当時の岐阜県政への痛烈な 批判である。とりわけ責任者だった梶原拓岐阜県知事をやり玉に挙げる。産廃業者に荷担したとも思える知事の姿勢に手厳しい批判を加えている。本書を読むと,梶原県政の問題は裏金問題で語られることが多いが,御嵩町産廃処分場問題も負けず劣らず酷い話というのがよく分かる。
 それにしても13年も昔の話となると,記憶もずいぶん薄れている。町長襲撃だけではなく2件の盗聴事件があったことや,当時珍しかった住民投票につながったことなど,まったく記憶に残っていない。それだけに本書は貴重である。日本社会の利権構造,地方自治の問題点など多くのことを教えてくれる。