Googled:The End of the World As We Know It,Ken Auletta,Penguin Press HC,p.400,$27.95

minami_chaka2009-11-23

 「巨大メディアの攻防〜アメリカTV界に何が〜」(新潮社)などで知られるノンフィクション作家Ken Auletta(ケン・オーレッタ)の新著。さすがの力量に脱帽である。チョーチンをぶら下げたような礼賛本や記事が多いなかで,手練れのノンフィクション作家がGoogleの組織・経営・人材の問題点を鋭く突いた本書は高く評価できる。Google本は急激に増えてるが,現時点ではピカイチだろう。なぜか Google 本の装丁(特に色遣い)はいずれもよく似ているが,本書もその点は同じ。ここだけは減点である。400ページもある原書を読むのは平易な英語とはいえ大変なので,翻訳書が出たら読まれることをお薦めする。
 創設者のBrinやPage,CEOのSchmidt は当然として,取材対象は実に多彩。非常に多くの取材を通して多角的にGoogleを分析し,強さと弱さを見事に描き出す。とりわけメディア業界の大物のインタビューは興味深い内容が多いし,BrinやPageの人間像についての記述は秀抜である。二人の創設者とSchmidtとの微妙な関係も余すところなく描いている。大金持ちになり結婚をし子どももできて,Googleの経営への関心が急速に薄れている創業者に警鐘を鳴らしている点は類書にないところだろう。
 Googleの弱点は経営者の油断のほか,技術者集団にありがちな独りよがりのところ。理系思考で合理的すぎるところが世間と衝突する。社会的に無邪気で無知すぎて,傲慢な印象を生み無用な反発を受けるのだ。Google Book Searchやストリート・ビューが巻き起こした騒動は記憶に新しいところだろう。大きくなりすぎて官僚的になり始めたところや,イノベーションを生みだせなくなり Google を去る人材が出始めたことも陰りとして取り上げる。
 一方で新聞や雑誌など守旧メディアに対しては歯に衣着せぬ批判を浴びせると同時に,生き残りのための処方箋を書いている。評者のような立場の者にとって考えさせられる指摘が多い。