神々の捏造〜イエスの弟をめぐる「世紀の大事件」〜,ニナ・バーリー著,鳥見真生・翻訳,東京書籍,¥1890

minami_chaka2009-12-21

 イエス・キリストの実在を証明する物的証拠「ヤコブの骨箱」を巡るノンフィクション。イスラエル警察が「世紀の詐欺事件」と呼ぶ古代遺物偽造事件を扱っている。考古学者,大富豪,政府高官,刑事などが続々登場して,インディ・ジョーンズのようなストーリ展開である。ミステリー小説といっても通用しそうである。ただし話が錯綜しているうえに行きつ戻りつするので,少々筋が追いづらい。
 イエス・キリストの実の弟といわれるヤコブの名前を刻んだ骨箱を軸に話は進む。精緻な偽造技術,偽物か本物か判然としない聖遺物の数々,爆発的に拡大した古美術市場,ソロモン王の第一宮殿にまつわる遺物など,考古学好きの評者にとって興味深い話が満載である。考古学が国家の求心力を保つ役割を果たすイスラエルの国情,戦争と考古学,信仰と聖遺物など,本書が扱う話題は豊富である。