2010.1.18●ミラーニューロン、ジャコモ・リゾラッティ著、コラド・シニガリア著、柴田裕之・訳、p.256、¥2415
「脳科学は面白い」「脳は神秘的」と改めて感じさせてくれる書。脳科学モノは読み飽きた感があったが,久しぶりに快作に出会った。最近の脳科学で最大の発見といわれるミラーニューロンを、発見者の大学教授自らが紹介している。ミラーニューロンの名称は,鏡のように他者の行為を映すところから来ている。日本語は翻訳調でぎこちなく読みづらいし,専門的でついていけないところもあるが、分かりやすい例をあげて解説しており理解を助けてくれる。全体でみれば,内容の面白さが読みにくさを上回っている。
ミラーニューロンは、ある行為をしているときに活性化するだけでなく、他人が同じ行動をしているのを見ているだけでも発火する脳神経細胞のことである。1990年代にサルを使った実験で見つかった。他人の行為を自分の行動になぞらえたり、他人の心を推し量るような人間の社会的知性を理解する手がかりの一つとして期待されている。サルの場合は行為に対象物がない“自動詞的行為(パントマイムのような行為)”に対しては活性化しないところや、口にモノを運ぶ行為をみているときの方が片づける行為をみているときよりも活性化の度合いが強いなどの特性は実に興味深い。