The Checklist Manifesto〜How to Get Things Right〜、Atul Gawande、Metropolitan Books、p.209、$24.50

minami_chaka2010-04-07

 チェックリストがミス撲滅に有用ということを約200ページにわたって論じた書。著者は外科医(米ニューヨーカー誌のライターも務める)なので、病院での事例を中心にチェックリストの効果を裏付ける。例えば、米Johns Hopkins病院は5項目のチェックリストを使うだけで院内感染を劇的に減したという。確かにチェックリストは安全を確保するため有効なツールだが、それを証明するために200ページも延々と書き連ねる筆者の執念には脱帽である。
 世の中の仕組みは複雑化し、人智を超えるレベルに達している。こうした状況で業務を安全に遂行するには、複雑性への理解を深めるとともに、多くの人の知見を集めて業務を遂行することが欠かせないと筆者は論じる。チェックリストが有用なのは、チームのコミュニケーションを活性化するキッカケになるためというのが著者の見立てである。
 米国の書籍らしく事例が豊富。医者としての実体験だけではなく、建設業界や飛行機の機長、投資家なども引き合いに出す。チェックリストを無視したために危うく倒壊しかけたCiticorpビルの話や、2009年1月に起きたハドソン川の奇跡、投資家として著名なウォーレン・バフェットのチェックリスト活用法など、興味深い話題を取り上げて読者を引きつける。ちなみにチェックリスト作成の要諦は「短く鋭く」「ムダな色は使わない」である。