同盟が消える日〜米国発衝撃報告〜、谷口智彦編訳、ウェッジ、p.208、¥1470
日経ビジネス編集委員、外務省外務副報道官などを務めた筆者が、危機に瀕した日米同盟に警鐘を鳴らした書。米NBR(The National Bureau of Asian Research)と呼ぶシンクタンクの「外れてしまった期待をどうする(Managing Unmet Expectations)」と題した小冊子の翻訳に、元外務官僚や防衛省関係者と筆者との座談会、筆者による解説を組み合わせた構成になっている。小冊子の内容は、筆者の表現を使えば「日本に向けた三行半」。冷徹な分析のもと、日本外交の問題点と失望が全編にわたって綴られている。内容は充実しており、日本の外交と日米関係に興味のある方にお薦めの1冊である。
同盟について日米の意識には大きなギャップがある。米国が期待するグローバルな貢献に日本は応えない(応える気もない)。日本はグローバルな協力には腰が引け、米軍への基地提供や“思いやり予算”が同盟における貢献のすべてだと思い込もうとしている。両者のすれ違いは平時だと取り繕えるが、有事には同盟の欠陥が露呈する。同盟が試される場面に直面したときに相互の信頼に深刻な危機が訪れ、盟約を破壊しかねない。現状の日米同盟は張り子の虎というのが本書の見立てである。
日本に三行半を突きつけた米国が向かうのは中国と韓国である。中国にアプローチし、新たなパートナとして韓国などの関係を模索する。本書を読むと、都合の悪いことは起こらないことにしてしまう日本の習性が国益に反していることがよく分かる。