ハカる考動学、三谷宏治、ディスカヴァー・トゥエンティワン、p.216、\1680
ハカる(測る、量る、計る)という行為が新たな発想、製品・サービスにつながることを説いたビジネス書。ハカるポイントは三つ。モノではなく「ヒトをハカる」、頭で考えるのではなく「作ってハカる」旧来の仕組みではなく「新しいハカり方を創る」である。それぞれについて1章を割く。コンサルタントらしく論理的な筋立なので安心して読めるし、ちょっとした発想のヒントを与えてくれる。発想法を説いた本としては悪くない。
各章では、見開き2ページで一つのトピックをまとめている。抽象的な話で終わるのではなく、具体的な手法にまでブレークダウンして解説しているのも本書の特徴だ。軸と目盛を定めてグラフ化する、必要に応じて正規化するといった手法は日経エレクトロニクスの常套手段。グラフ化することで隠れていたトレンドが何となく見えてくる、お勧めの方法である。
「ヒトをハカる」では、基準を定めてハカり直して新商品につなげる手法を紹介する。例えば、アシックスやミズノは子どもの足の幅を立体計測して細めの靴を生み出した。顧客評価をハカる無印良品の例も興味深い。「作ってハカる」とは、試作とテストを繰り返すことで商品力を高めていくこと。冒頭でIDEOがAppleを説得した事例を挙げているが、これは明らかに選択ミス。あまりに古いうえにマイナーすぎてピンとくる読者はどれほどいるのだろうか。江崎グリコの事例やシリコンバレーのベンチャー企業の方がよっぽど面白い。最後の「新しいハカり方を創る」では、それまでハカれなかったものをハカる方法を開発することで、大きな発見やビジネスにつなげる。ノーベル賞の小柴昌俊氏や田中耕一氏、任天堂のWii、Google、Amazon.comなどを例として挙げる。