小惑星探査機 はやぶさの大冒険、山根一眞、マガジンハウス、p.311、¥1365


 ノンフィクション作家の山根一眞が、2010年6月に帰還した惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトを綿密な取材で追った書。技術や技術者への筆者の暖かい眼差しを感じさせるノンフィクションに仕上がっている。技術者のロマンが満載で、ぐっと胸に迫る場面がいくつも登場する。何度も危機に陥りながらも技術者の知恵と工夫で乗り越えるところは、アポロ13号の話を彷彿させる。掲載されている写真もなかなかいい。特に地球に帰還する際の写真は感動的でさえある。技術者が夏休みに読むのに打ってつけである。
 はやぶさが打ち上げられたのは2003年。小惑星イトカワに到着し地表のサンプルを採取後、地球に戻ってきた。イトカワへの着陸方法やサンプルの採取方法などに、「へぇ〜」といった技術的な工夫があり読んでいて飽きない。衝撃を抑えるためにお手玉の原理を使うことに気づく話など実に興味深い。最大の読みどころは、7年間に起こった数々のトラブルとその解決法である。技術者にって大切なのは想像力と創造力というのがよく分かる。