Google問題の核心〜開かれた検索システムのために〜、牧野二郎、岩波書店、p.240、\2625
弁護士の手によるGoogle本なので、内容は著作権やプライバシー関係と思って購入したが大外れ。日本の著作権制度についての言及もあるが、インターネット検索におけるGoogle寡占化や偏向の問題点と解決策を真正面から扱っている。日本のヤフーがグーグルの検索エンジンを使うと発表したこともあって、妙に時宜を得た書である。法律家の本にしては記述はとても平易。インターネットで起こっている出来事に関心のある方にお薦めである。
ニューヨーク・タイムズで「Googleは神か」というコラムが掲載されたことがあった。筆者の危機感はそこにある。検索アルゴリズムの客観性を主張する Google だが、かなり検索結果は恣意的だし、そもそも網羅性に限界があると論じる。Google の検索にひっかからないモノは、世の中に存在しないに等しいという風潮に警鐘を鳴らす。そこで筆者は、競争原理が働き、検索結果の公正性を担保できる検索アーキテクチャを提案する。ポイントは情報の収集(探索という表現を使う)と評価を分離するところ。前者はコンテンツそのものを溜め込むのではなく、インデックス情報を収集し公開し、検索エンジン・ビジネスに競争原理を働かせる。
ちなみに本書執筆のキッカケとなったのは世界中の書籍をデジタル化し、検索可能にする Google Books。検索結果が売れている書籍に集中し、多様性が損なわれることを問題視する。環境関連で問題になっている生物多様性と問題意識の根幹は同じである。