Juice:The Creative Fuel That Drives World-Class Inventors、Evan I. Schwartz、Harvard Business School Pr、p.224、$24.95
刺激的な内容の本である。発明家と言われる人が、どういった思考プロセスを経て発明に至ったか、どんな経験(失敗)をしてきたのか、学問的なバックグラウンドはどうなのかなどを探る。エジソンやベル、ニコ・テスラ、ライト兄弟といった過去の偉人のほか、Holonyak(LEDの発明者)、Kamen(セグェイの発明者)、Katz(コールセンター・システムの発明者) など存命している発明家もカバーする。
もちろん本書を読んですぐに発明家になれる訳ではないが、示唆に富む指摘が多い。実生活でも役立ちそうである。本来なら「お薦め」マークをつけたいところだが、日本語訳「発明家たちの思考回路」は絶版状態なので無印とした。この書評を書いている時点で、 Amazonで扱っている古本には7000円以上の値段がついている。
出色なのは、冒頭に寄せた米Microsoftの技術トップだったMyhvoldの序文。発明の重要性は高まっているのに、ないがしろにされている。企業はR&D(研究開発)には熱心だが、管理することが難しい発明には組織的にサポートする仕組みが存在しないことを嘆く。発明には訓練と経験が不可欠であり、発明科学や教育が必要だと説く。的を射ており、この部分だけでも一読の価値がある。
筆者は発明家に共通する11の特徴を挙げる。可能性を見いだす、問題を深堀りする、パターンを抽出する、チャンスを引き寄せる、枠にとらわれない、障害を見極める、アナロジーで考える、成果物をビジュアル化して創造する、失敗を素直に受け止める、多角的に考える、システムに仕立て上げる、である。興味深い逸話の数々を読むと、技術っていいなぁと強く思う。