「普天間」交渉秘録、守屋武昌、新潮社、p.349、¥1680


 先日(2010年9月21日)に収監された守屋武昌・元防衛事務次官が、詳細な日記をもとに普天間基地問題の顛末を微に入り細にわたって綴った書。
国会議員、沖縄知事、官僚、建設業者などさまざまな人物が実名で登場し迫力満点である。官僚や政治家の醜い争いも赤裸々に描き、もはや怖いものなしといった感じで、興味深いトピックスであふれている。
 本書を読むと鳩山内閣が、基地問題に翻弄された理由がよく分かる。沖縄という相手は一筋縄ではいかない、ナイーブな政権には荷が重かったといえる。それにしても、引き延ばしや二枚舌と、本書で登場する沖縄の政治家の多くは徹底的に悪者扱いである。著者の沖縄に対する屈折した感情が伝わってくる。ただし一方の当事者の証言であり、一面的であることは否めない。本来ならジャーナリストが丹念な取材で多角的な証言を得て書くべき内容だろう。