NHK追跡!AtoZ  “逸脱する病院ビジネス"、NHK取材班、宝島社、p.254、¥1300


 医療を巡る不正の数々を、足を使った丹念な取材で追ったノンフィクション。2010年5月に放映されたNHKドキュメンタリー番組を基に構成している。本書が扱う題材は重く、読後は暗澹たる思いにさせられる。矛盾だらけで展望の開けない日本の医療制度・介護制度・年金制度・生活保護制度に興味のある方々にお薦めの書である。
 本書は、50%が赤字という病院経営の実態、違法な医療行為や医療費の不正請求の数々、法律の穴を巧妙につくコンサルタントの存在、生活保護受給者を食い物にする医療機関や闇の勢力、医療機関乗っ取りの実態などを取り上げる。深刻なのは生活保護者に支えられる病院経営や、貧困ビジネスとしての医療の問題だろう。取りっぱぐれのない生活保護者を病院間でトレードする話などは、本当なのかと耳を疑ってしまう。
 本書は最後に医療崩壊に対する処方箋を提示する。レセプトのオンライン化など納得できる内容だが、れさえも実現できそうもないのが読後感がよくない原因だろう。