日本の教育格差、橘木俊詔、岩波書店、p.256、\840


 この書評でも扱った「日本の経済格差」「家計から見る日本経済」の著者が、教育を切り口に格差問題を論じた書。教育の格差の実態や要因、それがもたらす問題について丁寧に持論を展開する。中卒、高卒、短大卒、大卒といった卒業段階での差、名門校と非名門校の差、私立と公立の差、専攻学科による差が、人生にどういった結果をもたらすのかを詳細に論じる。
 データを駆使して社会を論じる手口はこれまでと同じ。手慣れたテーマを、お得意の手法で料理しているので安心して読み進むことができる。ただし悪い本ではないのだが、内容は想定の範囲内におさまる。教育格差に対してボンヤリと抱いていたイメージを確認できるメリットはあるが、ハッとするような驚きや読むことの楽しさは期待しない方が良い。
 著者の主張の一つは、所得格差が広がるなかで、教育の機会の不平等化が進んでいるというもの。質の高い教育を受けると就職に有利で、高所得の可能性が高まる。その結果、子どもの教育にお金をかけられ、子どもが受けられる教育レベルは高くなる。こうして格差社会が固定化が進行する。筆者は日本の教育行政の貧困さをやり玉に挙げているが、同意できるところが多い。