Once You're Lucky, Twice You're Good:The Rebirth of Silicon Valley and the Rise of Web 2.0,Sarah Lacy,Gotham Books,p.304,$

minami_chaka2008-10-22

 1996年の米NetscapeIPO騒動に始まり2000年に破裂したドットコム・バブル。本書は,バブル崩壊後,どのようにシリコンバレーのネットベンチャーと起業家が復活したかを追っている。シリコンバレーの人間関係や人の流れ,成功を収めた起業家がどういった経歴をもっているかがよく分かる。シリコンバレーの裏事情が詳しく載っているので,ネット・ベンチャーの立ち上げに興味のある方には貴重な情報が詰まっているのかもしれない。ただ,評者は少々退屈だった。いまさらWeb2.0といわれても新味がないのも影響しているのだろう。筆者自身もWeb2.0インパクト不足をエピローグで語っているし・・・。
 本書の中心となるのはWeb2.0系の企業。評者が知っているところではTwitter,Six Apar,YouTubeMySpaceDiggFacebookなどが登場する。特に学生向けソーシャルネットワーク・サービスFacebookに入れ込んでいる。筆者のSarah Lacyはシシコンバレーに関するレポートを得意とするライターで,BusinessWeekなどに記事を執筆しているという。筆者が比較的大きく扱っているのが,Facebookの創業者Zuckerberg。インタビューの思い出を語るなど,Zuckerbergに多くのスペースを割いている(フルネームではなくZuckと呼ぶのは行き過ぎと思うが・・・)。もっとも,親しかったり詳しいからといって,FacebookやZuckの話が面白いかというとそうでもない。
 むしろ,終わり近くになって登場するソーシャル・ニュース・サイトDiggの話が面白い。Rupert MurdochのNews Corp.やAl Goreが会長を務めるCurrentTVがDiggを買収しようと話を持ちかける。しかし,いずれも合意しない。こうした大人が登場すると,ぐっと緊迫感が出るのは不思議である。Goreの逸話は別の意味でも楽しめる。