厚生労働省崩壊〜「天然痘テロ」に日本が襲われる日〜,木村盛世,講談社,¥1575

minami_chaka2009-10-31

 新型インフルエンザの水際対策に関する参考人質問で,自らが勤める厚生労働省をこっぴどく批判した羽田空港現役検疫官の書。筆者のこれまでの行動・言動から予想される通り,「アホ・バカ・マヌケ厚労省」の話題が次から次へと出てくる。役所として抱える欠陥だけではなく,高級官僚の人格欠損ぶりもなかなかすごい。
 本書が問題視するのは厚労省感染症対策。天然痘を使ったバイオテロが起こった場合を想定し,平和ぼけした日本の現状を小説仕立てで暴いている。フィクションだが筆者の経験に基づいた記述を含んでいるだけに説得力がある。筆者が責任者として任された,横浜港における新型インフルエンザ対策訓練も興味深い。寡聞にして初めて聞く話だが,役所間の連携(厚労省/検疫所,水上警察署海上保安部,地方自治体と関係者は多い)はお寒い限りである。
 確かに役所の悪口は楽しく読めるが,おかげで国家としての検疫体制の問題点を指摘するという本書の主眼(少なくともタイトルはそうなっている)が霞んでるのは惜しい。感染病対策の専門家として正当に評価されていないという著者の思いが強く出すぎて損をしている面は否めない。