不具合連鎖〜「プリウス」リコールからの警鐘〜、トヨタリコール問題取材班、日経BP社、p.223、\2800

minami_chaka2010-03-20

 トヨタのリコール問題を、主に技術的な切り口で論じた書。リコール問題の全体を取りあえず整理する上では役立つ。奥付には3月18日発行とあり、1カ月に満たない期間でこれだけの内容をまとめた編集部の努力は買える。編集期間が短かったので仕方がない面はあるが、専門家には突っ込み不足が感じられ、素人には難しい表現が目立つのは少々残念。
 本書は大きく五つの部分に分かれる。第1はリコールの内容と原因(アクセルペダルとブレーキの二つを取り上げる)、第2は自動車でリコールが頻発する背景、第3は自動車メーカーの対策、第4が10人の識者へのインタビュー、最期が豊田社長が行った3回の記者会見の全貌である。いずれも要領よくまとめられている。特にインタビューは興味深い。東大の藤本隆宏教授、工学院大学畑村洋太郎教授、電通大の新誠一教授、名古屋大学の高田広章教授などポイントを押さえているし、それぞれのコメントも悪くない。
 取材班には、雑誌やネットを活用して二の矢、三の矢を放って欲しい。トヨタのリコール問題については今後、数多くの書籍や記事が登場するのは間違いない。これらのコンテンツを理解するうえで、多くのポイントを簡潔にまとめている本書は役立ちそうだ。