クラウド時代と、角川歴彦、角川oneテーマ21、p.214、¥740

minami_chaka2010-04-06

 2冊続けて同じ分野の書を選んでしまった。ミスである。本書は角川グループホールディングス会長兼CEOの角川歴彦がデジタル・メディア観をまとめた書。映像やアニメなどに関する知見はさすがで、見るべきところは多い。
 一方で疑問を感じるところもある。デジタルメディアやクラウド・コンピューティングなどによって日本の産業構造が大きく変わるのは2014年というのが角川の見立て。しかし、あと4年も産業構造が激変しないようだと、世界レベルで見ればひどい落ちこぼれである。これでいいのだろうか。「事業構想力をもった知的企業だけが2014年の大変革の時代を生き残る」「ネット時代に柔軟に対応した法体系の構築とICT産業を育成する骨太の施策の実行を迫られている」というご託宣も月並みである。Web2.0についての議論も今更さらの感がある。
 角川は、映像やアニメなど日本のエンタテインメント産業はガラパゴス化することが重要と指摘する。世界から孤立することで独自性を醸成したからこそ、世界から一目置かれた。確かにITなどは、国際標準化によってマスを獲得することが事業拡大につながる。一方、映像やアニメなどは独自性に意味がある。「自らルールを作ることができる分野で世界に打って出る」という角川の指摘は間違っていない。