知識の社会史〜知と情報はいかにして商品化したか〜、ピーター・バーク、井山弘幸・訳、城戸淳・訳、新曜社、p.408、¥3570
凄い本である。紹介文に「知識と情報の大パノラマ的展望!」とあるが、けっして大げさではない。ケンブリッジ大学教授の文化史学者が40年にわたる研究にもとづいて、知識と情報が近代初期(ルネサンスから啓蒙主義の時代)においてどのように誕生し扱われてきたかを論じている。残念なのは期間が15世紀の印刷革命から18世紀の『百科全書』までというところ。できれば現代まで俯瞰してほしいところだが、ページ数が爆発してしまうのだろう。一般向きではないので推薦マークはつけないが、メディアや情報について興味のある方にはお薦めである。
本書の価値は、「知識を生業とする」「知識を確立する」「知識を位置づける」「知識を分類する」「知識を管理する」「知識を売る」と続く章立てを見ると分かる。印刷、雑誌、新聞、ジャーナリスト、図書館、スパイ、索引、脚注など、切り口は多彩で、網羅性も高い。400ページを超える大著だが、すいすい読める(翻訳には一部問題もあるが…)。
知識と情報が宗教や政治とどのように関わりをもってきたか、どのように管理・検閲されてきたかなど、世相・社会との関連づけも興味深い。オランダやイギリスが開放的な情報管理制度をもち、スペインやオーストリア、ロシアは閉鎖的だったという指摘や、出版の一般化に伴って精読から多読へ読書スタイルが転換したなど、知られざる近代初期という楽しみ方ができる書である。ちなみに深く畏敬をもって読むスタイルから、広く気ままに読むスタイルへの変化が、索引や目次の一般化につながったという。なるほど。