次に来るメディアは何か、河内孝、ちくま新書、p.232、¥777


 タイトルの「次に来るメディアは何か」と中身にギャップがある。インターネットやケータイ、タブレットを軸にした“メディアの未来”を期待して読むと失望する。電子新聞を含め新聞のビジネスモデルの話に終始する。確かに日本では朝日新聞の赤字決算と希望退職募集、米国ではNew York Timesの経営危機に代表されるように、新聞業界は危機的状況に置かれている。毎日新聞の常務だった筆者が、新聞の生き残り策にこだわるのは理解できる。新聞以外ではテレビ局にも若干言及しているが、あくまで新聞系列局としての扱いでありオマケに過ぎない。
 本書の構想は、筆者が米コロンビア大学大学院に短期滞在中に生まれたという。そのせいか日本だけではなく米国、欧州の新聞業界にも目を配っており役立つ。特にフランスの新聞事情については知らなかったことが多く、勉強になった。
 読み応えがあるのは最終章「次に来るメディア産業図」である。筆者は新聞業界は2010年、テレビ業界は2012年に大再編があると予測する。筆者が予測する再編成図はかなり大胆だが興味深い内容を含んでいる。筆者は「新聞社〜破綻したビジネスモデル」で業界の闇を告発した人物。しかし本書を読むと、根っからの新聞人というのがよく分かる。