壊れた脳 生存する知、山田規畝子、角川ソフィア文庫、p.313、¥780


 すさまじい書である。脳出血を3度も繰り返し高次脳機能障害者となった外科医が、その症状、リハビリ体験を克明に綴っている。何があってもポジティブな筆者の生き様は見事である。高次脳機能障害者から世界がどのように見えるか、睡眠が脳の機能回復にどれほど重要か、筆者が機能回復のために行った数々の工夫など、興味深い記述が続く。
 脳の病気で倒れた脳科学者の書「奇跡の脳」をこの書評で以前紹介したが、本書の方が懇切丁寧。発症前後の克明な記述、リハビリにおける悪戦苦闘だけではなく、周囲の人間が注意すべきことなどを盛り込んでいる。説得力のある記述は有用で、脳出血脳梗塞の方との付き合い方を学べる良書である。