プライスレス〜必ず得する 行動経済学の法則〜、ウィリアム・パウンドストーン著、松浦俊輔/小野木明恵・訳、青土社、p.414、?2400


 豊富な事例をもとに、流行の行動経済学を解説した書。秀抜な内容で知的好奇心を満足させられる。消費行動における人間の不合理さがよく理解できる内容になっているので、人間が合理的に行動することを前提に組み立てられ、数学と化している経済学の限界を説いた書としても読める。行動経済学はこのところテレビCMで取り上げられているので興味をもっている方も多いだろう。そういった方々にお薦めの1冊である。
 本書を読んで感じるのは人間の不合理さである(だから人生は楽しく、人間は愛すべき存在だともいえる)。例えば、人間は比や対比に敏感である代わりに絶対的な数字に鈍感だったり、おとりの数字に惑わされやすかったりする。ブランド店ではあえて高額商品を陳列し、他の商品をお買い得に見せて消費者の心をくすぐったりする。
 このほかにも、「お金を失った打撃の大きさは、同じものを得た喜びの大きさよりもずっと大きい(どこかの CM で使われていた)」「買い物客は店内を反時計回りに進むと財布の紐が緩くなる」「消費者は実際には高くても、均一料金を好む」「払い戻しを好む」といった興味深いエピソードが次から次へと登場する。400ページ超とそこそこの分量がある本だが飽きることがない。