What Technology Wants、Kevin Kelly、Viking Adult、p.416、$27.95


 技術の切り口で生物・生命、社会、都市の進化を論じた技術哲学論。技術、生物、都市の進化を統一的にとらえ、すべてに共通する法則を探る。恐竜の話から映画「アバター」、爆弾犯ユナボナー、アーミッシュ、小説「1984」の世界までストーリー展開は縦横無尽。スコープは実に壮大で読み応え十分である。問題は少々難解なところと、400ページを超える大部で持ち運びに不便なところ。
 Wired創刊に参加した筆者の主張を煎じ詰めると、技術の進歩は必然的に起こるというもの。進化の方向性は決まっており、ブレークスルーはけっして突然変異ではないと主張する。ブレークスルーを生む環境は徐々に整い、最後の一押しのところまで熟す。だから、原子爆弾の理論が6カ所で同時に発見されたように、多くのブレークスルーは同時多発的に生じる。
 壮大な技術論だが、技術に対する著者の見方はさして新しくない。曰く、技術は進歩すると見えなくなる、進歩の定石は組み合わせること、制約こそが技術を進歩させるドラーバ、効用が大きい技術ほど弊害も多い、技術は汎用で生まれ専用へと深化する、などである。