人口減少時代の大都市経済〜価値転換への選択〜、松谷明彦、東洋経済新報社、p.293、\1800


 大蔵省出身の大学教授による経済論。人口の減少が日本経済にどのような影響を与えるかを統計データを駆使しながら、断定調で歯切れよく論じる。人口減少によって日本では大都市の方が地方よりも大きなダメージを受ける、人口が減少している状況下の増税は愚の骨頂と断じる。高齢化社会における年金の在り方などについて持論を展開する。人口減少という1点から切り込む視野の狭さと処方箋に驚きがない点が気になるものの、日本の人口動態を知り、その社会的影響を概観するうえで役立つ1冊である。
 筆者は、日本の大都市が取り組むべき課題を四つ挙げる。一つは国際化。大都市経済の閉鎖性が製品の国際競争力の低下につながっている。国際分業せよと説く。第2はビジネスモデルの転換。大都市経済は、輸入技術と低賃金労働を基盤とした薄利多売のビジネスモデルをいまだに使い続けているが、もはや限界。専門性を高め、製品やサービスを高く売る工夫をしなければ生き残れないと論じる。第3は、増税一辺倒の財政政策からの転換。人口減少下では、支出を削減しない限り、際限のない増税が必要になる。第4は人生の再設計である。生涯収入が確実に減るなか、お金をかけない生き方が不可欠になると説く。