国家と政治〜危機の時代の指導者像〜、NHK出版新書、田勢康弘、p.240、¥819


 日経新聞の元政治記者で現在は政治評論家の田勢康弘が、四国新聞に連載した政治コラムを加筆・再構成した書。連載は2007年から始まったようだが、本書では2009年の民主党への政権交替前後から東日本大震災後までを中心にカバーする。東日本大震災後の政治の惨状を見ていると、政権交替時のマスメディアや社会の高揚は何だったのかという思いにさせられる。
 本書は危機の時代に即応した政治の在り方や望まれる政治家像、日本外交の欠点、政治の迷走の一因となっている世論調査をはじめとした政治ジャーナリズムの問題などを論じる。多くの政治家と政局を見続けてきたベテラン・ジャーナリストの筆らしく、ストーリーには説得力がある。言葉は慎重に選んでいるものの語り口は実に厳しい。
 本書を読んで感じるのは、日本の政治と政治家はずっと権力争奪ゲームに明け暮れ、迷走を続けているということ。本書は、カバーしている時期が政権交替後なので民主党鳩山由紀夫小沢一郎菅直人に焦点を当て批判しているが、自民党も五十歩百歩。筆者もこうした状況に危機感を募らせ警鐘を鳴らす。もっとも政治に対するメディアの論調も十年一日の状態に感じる。いつも同じように嘆くだけで、さほど変化を感じられない。虚しさを感じるのは評者だけではあるまい。田勢ほどのベテラン・ジャーナリストでも、政権交替時に民主党の問題点に厳しく切り込めなかったのは不思議である